投稿原稿 & Publicity 豊田裕章(豊田歯科医院院長)  TOYODA DENTAL CLINIC
浪速区歯科医師会誌 第27号 歯科医のための食生活・栄養講座PART 8
〜コレステロールとトランス脂肪酸〜・1



体内で合成されるコレステロール量を減らすためには、脂質の中でも固体脂肪とくに牛・豚・乳製品などに含まれる動物性の飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが有効です。(魚の油は液体脂肪の不飽和脂肪酸です)
歯周病を悪化させる因子としても注目されるコレステロールですが、その評価基準が変更されているので、そのこと(脂質異常症)について触れておきます。

1、脂質異常症とは
 
 血液中に溶け込んでいる脂質が、標準値より高いなどの異常を示す場合、とくに総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかの値が基準より高いか、HDLコレステロール値が基準より低い場合を、従来は「高脂血症」と呼び、薬物などの治療の対象としてきました。
 しかし、善玉と呼ばれるHDLコレステロール値が低い場合も「高脂血症」と呼ぶのは適当でないとして、2007年4月25日に、日本動脈硬化学会は病名を「高脂血症」から「脂質異常症」に変更する新しいガイドラインを公表しました。 主な変更点は、2つです。

「高脂血症」という病名を「脂質異常症」に置き換えた

総コレステロール値を、予防や診断の基準にするのをやめた

脂質異常症としての新しい診断基準(空腹時採血)は、次のとおりです。

* LDLコレステロール値が140mg/dL以上
* HDLコレステロール値が40mg/dL未満
* 中性脂肪値が150mg/dL以上

この5年ぶりの改訂により「総コレステロール値が高いと心筋梗塞など冠動脈疾患の発生リスクが高まる」という考え方が取り下げられ、総コレステロール値が高めでも、HDL-Cが基準値より高めであれば大丈夫とされたのです。
 ある病院での2007年3月の健診者2657人の血液検査を分析したところ、従来の基準で高脂血症と診断されていた人の25%が、新指針では正常となったそうです。今後「総コレステロール値が220mg以上なら問答無用で薬を飲ませる」という製薬会社のみが喜ぶようなやり方は、通用しなくなり、無駄な医療費が少しは減らすことができるかもしれません。
また、日本人の場合は、6つの危険因子を考慮してLDL-C値を評価します。

@加齢(男45才、女55才以上)A高血圧B糖尿病C喫煙D冠動脈疾患の家族歴E低HDL-C血症=40mg未満    
 
 薬物療法開始の基準としての、LDL-C値はリスクの程度で異なり、低リスク群(危険因子ゼロ)は160以上、中リスク群(危険因子1〜2)は140以上、高リスク群(危険因子3以上)は100以上となります。
 さらに、中性脂肪値や血糖値、血圧が高いと、LDLの中でも超悪玉と呼ばれる小型LDLが増加し、動脈硬化を非常に強く促進しますので、末梢循環である歯周組織の血流にも悪影響を及ぼし、歯周病悪化の大きな誘因となることが考えられます。
 これまで述べてきた基本的な食生活のあり方をできる限り守り、さらに男性の場合は、アルコールの飲みすぎ、(高脂肪の)酒の肴に注意し、女性の場合は、甘いパン・お菓子や甘味飲料・果実のとりすぎにも注意しましょう。言いかえれば、精製糖&固体脂肪(飽和脂肪酸)に注意するということです。
 
 さらに、最近の話題として、固体脂肪とともに、悪玉コレステロールを増加させ動脈硬化・心筋梗塞を促進させる因子として、さらには内臓型肥満や糖尿病や認知症への危険性が問題化しているトランス脂肪酸の摂取にも注意しなければなりません。

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