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| 浪速区歯科医師会誌 第29号原稿 水が育てる食文化について (2009・11・30) |
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| 〜水の硬度と調理法について〜 | |||||||||||||||||||||||||||
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『浪歯会誌 第29号原稿』 歯科医のための食生活・栄養講座 PART 10 〜水が育てる食文化について〜 1、前号までのまとめ 〜日本人に欧米型食生活はあわない〜 日本人の食生活と、欧米型食生活(特に北緯50 度以上の地域)は、気候・風土の違いゆえ、大きく 異なっています。 ![]() @ 北緯35度(日本)では最高の組み合わせの、お 米と大豆だが、北緯50度(ヨーロッパ)では育 ちません。ヨーロッパでは、基本的食材として米 と大豆は存在しないのです。 A 日本では、良質の軟水が豊富だが、ヨーロッパで は硬水が基本です。ミネラルの多い硬水では、味 を引き出しにくく、だしをとるという発想も出て こないのです。 B 温暖で多湿な日本では、植物性乳酸菌による発酵 (漬け物)であり、降雨量・湿度少なく涼しいヨー ロッパでは、動物性乳酸菌を利用した発酵(バタ ー、チーズ、ヨーグルト)です。また、日本で は、かび(麹かび)を活用した発酵食品が実に豊 富です。 温暖・多湿で作物がよく育つ日本では、米・植物食中心で、低脂肪の食生活となり、寒冷・少雨で作物の取れにくいヨーロッパでは、寒さの影響・対策として動物性食品の割合が高い、高脂肪高たん白の食生活となります。日本人は、ごはん中心食、欧米人はパン・肉・乳製品食で、お互いに、まねをするものではないのです。 2、水の違いが食文化に影響する 気候の違いも重要ですが、忘れてはならない重要な ことが、上記Aの水の違いです。 一般に外国(ヨーロッパや中国など)の水と、日本の水とでは、ミネラル含有量に違いがあります。 * 水の中のミネラル分のうち、カルシウムイオンとマグネシウムイ オンの合計量を、炭酸カルシウム量に換算して、1リットル中に 何ミリグラムあるかを示したものが、水の「硬度」です。通常200 度以上を「硬水」、100度未満を「軟水」といいます。 料理は水に大きく影響されるので、軟水の地域と、 硬水の地域では、料理法には大きな違いが出てきます。水が異なれば、食文化も大きく異なるのです。 【 世界の水の硬度 】 *硬度50未満 神戸、琵琶湖、利根川、シドニー、マドリード ニューヨーク、アマゾン川など *硬度50〜99 大阪、東京、カイロ、サンフランシスコ、ホノルル、ミシシッピ川など * 硬度100〜177 宮水、ニューデリー、長江、ライン川、ドナウ川、ワシントン、シカゴなど * 硬度178〜357 那覇、北京、パリ、ミュンヘン、ミラノ、テムズ川、セーヌ川、ラスベガスなど 3、水の硬度と料理法の違いについて 〜硬水では米を美味しく炊けない!〜 良質の軟水に恵まれた日本では、炊く・煮る・蒸すなどすべて水から始まり、水で終わります。ヨーロッパの硬水の地域では、硬水をそのまま使えないため、油で炒めたり、水蒸気を利用して少量の水で蒸し煮にしたり、野菜中の水分を利用しています。例えばイタリア料理では水分が95%のトマトがふんだんに使われています。 軟水なら、米は水に入れて美味しく炊くことができますが、硬水で炊くと黄色くパサパサした口当たりの悪いものになるので美味しく炊くことができません。 カルシウムには食物繊維を固くさせる作用があるためです。よって、硬水のヨーロッパや中国では、ちまきのように炒めた米を竹皮に包んで蒸したり、油で炒めてピラフにするわけです。 硬水で豆やジャガイモを煮ると、ゴリゴリになってしまいます。植物の組織細胞には多糖類のペクチンが多く含まれており、これがカルシウムやマグネシウムと結合して細胞が固くなるためです。 同じ食材でも、水の違いで料理法が大きく異なってくるのです。結果、それぞれの食文化は全くちがうものとなるのです。 4、“だし”と“スープストック” 〜硬水では、だしをとれない!〜 だしをとるのも軟水の日本ならではの料理法です。硬水では、だしをとることはできません。 かつおぶし・昆布などのだし成分になるアミノ酸やペプチドが、硬水中のカルシウムやマグネシウムと結合して固まってしまい、旨味成分が溶け出てこないからです。 ヨーロッパや中国の硬水の地域では、煮込んだスープストックがだしの代わりになります。肉などを長時間煮込むと、肉に含まれる不溶性たんぱく質のコラーゲンが水溶性たんぱく質のゼラチンに変わり、これがカルシウムやマグネシウムと結合して固まり、これが脂肪とともにアクとしてスープストックの上に浮いてきます。これをすくい取って、水からカルシウムやマグネシウムを取り除くことができるのです。 これによって水を軟化し、また骨やスジ肉のナマ臭さも取り除いているのです。 ただ、硬水で煮ると肉は味が落ちるし固くなるので、ヨーロッパでは水を避けるためにオリーブやバター、生クリームなどを用いた油料理が中心になります。つまり、「油料理とスープストックは、硬水のまずさ対策から生まれた貴重な料理・食文化だ」といえるのです。 同様に、水の硬度の高い沖縄では、水を使わずに油で炒めたり、肉を煮込んだりする料理が多いのです。 5、飲み物と水の硬度 〜硬水はお茶には適さない〜 緑茶・紅茶・ウーロン茶など、それぞれ発酵程度は違いますが、いずれもお湯に成分を抽出するため、おいしく飲むには軟水が向いています。 水の中にカルシウムが多いと茶の味・渋味の成分タンニンが溶け出てきません。マグネシウムが多いとまろやかさを損ない味が悪くなります。よって硬水は緑茶には適さないのです。 ヨーロッパでは、コーヒーが好まれます。濃厚な味と香りが、硬水の欠点をカバーしてくれるからです。 アメリカでは、ヨーロッパより水の硬度が低いので、ヨーロッパより薄い、いわゆるアメリカンコーヒーが飲まれているわけです。 やはり、美味しく飲むには軟水が適しています。 6、伝統にはサイエンスがある 伝統的な地域の料理法・食文化の背景には、きちんとした科学的根拠があるのです。単なる偶然などではないのです。 良質な軟水に恵まれ、植物の生育に適し、食材の豊富な、日本の気候・風土の素晴らしさを再認識し、伝統を大切にした食生活をこれからも守ることが、日本人の健康維持に不可欠なのです。 〜朝食にはごはん・みそ汁を!〜 [参考図書] 小事典暮らしの水(建築設備技術者協会編・講談社) 水とからだの健康(左巻健男著・小学館) 水の不思議(松井健一著・日刊工業新聞社) |
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