投稿原稿 & Publicity 豊田裕章(豊田歯科医院院長)  TOYODA DENTAL CLINIC
大阪府保険医雑誌2009年12月号投稿原稿
 
    「地産地消」より「土産土法」こそ食べ方の原点である  (2009・11・8)
                 〜地元の食べ物を、気候風土に合った方法で食べよう!〜



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テロップ
「地産地消」より「土産土法」こそ食べ方の原点である
――地元の食べ物を、気候風土に合った方法で食べよう!


キーワード&キーセンテンス

・食べ物の地産地消の前に、水の地産地消を!

・日本と欧州では水が違う〜軟水と硬水

・“食べるべきもの”が“食べたいもの”になるような食育を!

・私たちが食べるべきものとは、できる限りの近くのものである
 
・“地産地消”よりも“土産土法”を食べ方の「柱」にしよう

・米は、“パン”ではなく“ごはん”で食べよう

・伝統を大切にした生き方・食べ方が私たちを守ってくれる

               
はじめに

地産地消とは、地域生産地域消費の略語で、地域で生産された
農産物や水産物をその地域で消費することである。

 一部の人間を例外として、(太陽は別として)遠くのものを生存の手段として生きている動物は、この地球上に存在しない。このような、動物としては例外的な生き方をしている人間の代表例が、この50年ほどの日本人である。
 日本人には日本人ならではの、大阪には大阪ならではの食べ物・食べ方がかつてはあったはずだが、それも、どんどん姿が見えなくなっている。
 
 この50年で、国産のお米の消費量はほぼ半減し、代わりに輸入小麦に頼るパン食が増えた。朝食に、ごはん(和食)ではなくパン(洋食)を食べる家庭も増え続けている。同じ様なカロリーでも、ごはん食とパン食では、総エネルギーに対する脂質の占める割合には大きな違いがあること、すなわち、パン中心のメニューではかなりの高脂肪食となることを、どれだけの人が理解しているのだろうか。
 ごはんは水分60%で脂質3%ほどだが、トーストパンにバターやマーガリンを加えたものは、水分30%台で脂質は30〜40%となり、洋食系のおかずも高脂肪となりやすい。パン&洋食では脂肪減らしは難しい



 また、1人あたりの供給量を見ると、国産肉でも飼料のかなりの部分をとうもろこしなどの輸入穀物に頼る等々、自給力の低い肉類の供給は9倍近く増え、明治以前には、日本人には全くなじみの無かった牛乳・乳製品の供給量も、この50年で8倍近く増加している。



 このままでいいのだろうか?地産地消にこだわらなくても、健康長寿を守ることはできるのだろうか?

善循環的な食べ方を

 残念ながら?地球上で増え続けている人間の活動が、自然界のバランスを狂わせている今、もう遠くのものを好き勝手に食べることは、許されないのだ。『善循環=自らの健康を守るとともに、地域の気候・風土を守り、国土を保全し、豊かな地球環境を守ることすべてがつながり、持続していくこと』をめざした食べ方を実行しなければならない。 
 そのためには、食べ物を選ばなくてはならないが、普段どんな水を飲んでいるかも大切だ、ということを忘れてはならない。

  食べ物の地産地消の前に、“水の地産地消”が先である

@ 飲み物は、地元の水(水道水)が基本。ペットボトルの外国の水は飲まない。

→日本は、水の輸入大国である
 大量の水を必要とする農産物をはじめ、工業製品や木材などの多くを、日本は輸入している。日本は、それらの輸入品を通して大量の水を輸入していることになる。
 人口増と地球温暖化が加速する中で、世界は、今後危機的な水不足になると予想されている
 これからは、国産の食べ物を出来るだけ守るとともに、身近な水を守り利用していくことが、何よりも大切である。身近な水道水を大切に使っていこう!

→水道水では、水質や塩素消毒などが不安だというのなら、家庭用の浄水器を最小限使用すればよい。ペットボトルの水を買って飲むよりも、はるかに安価で、環境への負荷も少ない。私個人としては、器械を使わず、水の10分の1程度の重さの備長炭や竹炭にひと晩つければ十分だと思っている。(炭は、3ヶ月に1回煮沸して日干しする)

A できるだけ近くの物を、近くのやり方(気候・風土にあったやり方)で食べる。カタカナメニューよりひらがな・漢字メニューがおすすめ。

→土産土法とは、
 日本人の食事でも、他の民族の食事でも、健康にいいといわれてきた食事には、ある共通性がある。それが土産土法=その土地(地元)で、その季節にとれるものを、昔からその土地で伝わる調理法で食べる、ということである。

→近くの物を食べること(地産地消)は、経時的な栄養素のロスを抑えることができ、防虫・防腐対策も最低限ですみ、運送にかかるエネルギー消費も少なく、安全で地球環境を汚しにくい食べ方につながり

 身近な(風土・気候に合った)やり方で食べること(土産土法)が、自らの体質(遺伝子のタイプ)に合った、歯にも体にも良い食べ方になるのだ。

→米は、水を足して炊いて粒のままで“ごはん”にして食べるものである。それをわざわざ、粉にして砂糖や塩や添加物を入れて“パン”にして食べるなど、とんでもない話である。米であろうと、小麦であろうと、パン食になると、ごはん食よりもはるかに高脂肪で、添加物の多い食べ方になる。
 近くの物であれば、食べ方はどうでもいいのか!米粉で作ろうと小麦粉で作ろうと、日本ではパンは嗜好品として考えるべきである。
 
 地産地消という言葉は、農業面を中心に語られることが多く、食べ方や健康面にまで、考えが及びにくい。
  産地と方法がセットになることが、健康を考える上では
  不可欠である。

 食を考える上で「地産地消」よりも「土産土法」をスローガンに推奨する理由がここにある。日本において、地産地消のイタリアンや地産地消のフレンチなんて、何か変だと思うのだが・・・。

→米は外皮が硬く、玄米の表面をこすっても粒の形を保ったままで白い面が出てくるが、玄小麦は、表面をこすると皮がむけて少しの力で形が崩れて粉になる。米は粒食、小麦は粉食であるのには、こうした“よほどの理由”があるのだ。米は、パンではなくごはんで、米の粒の形を崩すのは,自分自身の歯の役割にしよう

→100%米粉パンには、それなりの技術が必要なため、米粉パンといっても、小麦粉や小麦グルテンを混ぜて作られた米粉入り小麦パンである場合も多い。

→滋賀県の竜王町の竹山秀雄町長は、町のホームページに「チャレンジ!土産土法〜土産土法まちづくり」のコーナーを設け、土産土法の大切さを町民に提言されている。
( http://www.town.ryuoh.shiga.jp/index.html )

B 米(ごはん)大豆(味噌汁)植物性発酵食品(漬け物、納豆など)魚介類を食生活の土台にする。

→しかし、大豆の自給率は以前から3〜5%、化学薬品漬けのような漬け物が増えて本物のぬか漬けは手に入りにくくなり、近海魚も激減している。米こそは、日本人の地産地消・土産土法を守る最後の砦である

食の欧米化と日本人への影響

 日本人は世界一の長寿になれたのだから、遠くの食べ物を、遠くの食べ方で食べてもいいじゃないか、食生活が欧米化してもよかったのじゃないか!?と質問をうけたら、どう回答すればいいのだろうか?
 乳幼児死亡率の減少、医療技術の向上、社会環境の整備、食料の安定供給、などが日本人の長寿化にプラスとなったわけだが、脳卒中・胃がんの減少などをのぞけば、食生活の欧米化は、プラスだったとは言えないのではないか。
 欧米の白人の食生活のすべてが悪いということではなく、日本人などモンゴロイドが見本にすべきではないところをまねたところに問題があった、と思うのである。
 こうした食生活の変化の最大の特徴は、すでに述べたように、肉・乳製品・脂質(特に固体脂肪=飽和脂肪酸)の消費量の増加、と炭水化物の質的な変化(未精製穀物などの複合炭水化物の消費が減り、精製された単純炭水化物が増えたこと)、そしてインスタント・ファストフードの増加だと言える。

日本人に欧米型食生活はあわない

【 日本とヨーロッパ・アフリカ(同一緯度・縮尺)】



      『伝統食の復権』島田彰夫著(東洋経済新報社)より

 日本人の食生活と、欧米型食生活(特に北緯50度以上の地域)は、気候・風土の違いから、大きく異なっている。

@ 北緯35度(日本)では最高の組み合わせの、お米と大豆だが、北緯50度(欧州)では育たない。欧州では、基本的食材として米と大豆は存在しないのである。

A 日本では、良質の軟水が豊富だが、欧州では硬水が基本である。ミネラルの多い硬水では、米を炊いてもぱさつきやすく、緑茶の成分も湯に溶けにくい。味を引き出しにくい硬水では、だしをとるという素晴らしい発想も出てこない。みそ汁やお吸い物は、日本の良質な軟水から育まれた素晴らしい食文化なのである。

B 温暖で多湿な日本では、植物性乳酸菌による発酵(漬け物)であり、降雨量・湿度少なく涼しい欧州では、動物性乳酸菌を利用した発酵(バター、チーズ、ヨーグルト)である。また、日本では、かび(麹かび)をうまく活用した発酵食品が実に豊富である。

 温暖・多湿で作物がよく育つ日本では、米・植物食中心で、低脂肪の食生活となり、寒冷・少雨で作物の取れにくい欧州では、寒さの影響・対策として動物性食品の割合が高い、高脂肪高たん白の食生活となる。日本人は、ごはん中心食、欧米人はパン・肉・乳製品食で、お互いに、まねをするものではないのだ。

沖縄の現実

 国の政策によって、健康的な伝統食の習慣を奪われて、欧米型の食生活を強いられたアメリカインディアンの人々は、世界に先駆けて不健康になり、肥満・糖尿病などの生活習慣病に苦しんでいる。アメリカインディアンと日本人は、人種的には祖先が同じ親戚民族で、同じことが日本(沖縄)でも起きている。
 かつては長寿世界一だった沖縄の人々の平均寿命は近年低下し、男性は2000年には全国で4位から26位に急落している。(26ショック)こうした沖縄の人々の変化の最大の要因は、食生活の変化だと考えられている。


 アジアで、米を主食とする文化圏で真っ先に食生活の欧米化が進んだ地域が沖縄で、米軍の統治がもたらしたアメリカの食物・食文化の流入により、若い世代でファストフードや加工食品の摂取量が多くなり、60年代以降脂肪摂取量が急増し、98年には摂取カロリーの31%が脂肪となっている。
 そして、30〜40歳代を中心に肥満が増え、心筋梗塞などが増加している。
 こうした栄養状態の変化と、車を多用し自分で動くことが少なくなったことなどが、沖縄の平均寿命を低下させ、肥満率や、生活習慣病の発症率を上昇させていったようだ。


 やはり、脂質を過剰に摂取しないことは、日本人の健康を守るうえで大切なことであると考えられる。(参考:琉球大学医学部等々力英美准教授らの研究「チャンプルースタディー」)

学校給食を考える

 私が小学生の頃(昭和38年〜44年)は、学校給食はすべてパン食だったが、朝食がパン食である家庭は、きわめて少なかったように思う。現在、学校給食は、米飯が増え、全国平均で週に約3回が米飯給食である。かわりに、朝食がパン食である家庭が、増え続けている
 例えば、明石市(週3回米飯給食)の児童数553名の某小学校の2008年の調査では、子どもたちの朝食は、53%がパン食、32%がごはん食、4%がごはん・パン食となっている。家で朝、パンを食べている子どもは、給食がパンの日は、一日3食のうち2回がパン食であるのだ。これは、どう考えても異常である。
 
 学校給食のパン食は、遠くで生産された輸入小麦粉が材料であり、パンという遠くの食べ方である。栄養学的には問題が無くても、地産地消からみても土産土法からみても、0点の食べ方である。

 週に何回も、パン食を朝昼一日2回も食べるなど、おかしいとしか言いようが無いと思う。日本人の食の無国籍化、質の低下を招くだけである。
 例えば、フランス人やドイツ人の子どもが、家庭での朝食にも、昼の学校での給食にもごはんとみそ汁を食べていたら、どうだろうか。やはり変である。今の日本では、こうしたおかしな現状がいまだ続いているのだ。
 
 教育の一環である学校給食で、子どもたちにパン食を提供する意義などほとんど無いと考えていいのではないか。
 地産地消からも土産土法からも、学校給食は完全米飯に切り替えて行くべきだと思う。

おわりに

 伝統を大切にした生き方・食べ方が、私たちを守ってくれているということを決して忘れてはならない。地元でとれたものを風土に合った食べ方で食べること、をこれからも心がけていきたい。“郷土料理”を大切に守ろう!
       
  〜ごはん、みそ汁、漬け物こそ日本人の
                     郷土料理の原点である〜
  〜 医は食に、食は農に、農は自然に学べ! 〜 


[ 参考図書 ]
伝統食の復権:島田彰夫著  (東洋経済新報社)
なぜ[粗食]が体にいいのか:帯津良一・幕内秀夫著
                   (三笠書房知的生きかた文庫)
太ったインディアンの警告:エリコ・ロウ著(NHK生活人新書)
       
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